One of 泡沫ブログ

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人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか

 

 

森博嗣氏といえば、ライトノベルのような不思議系ミステリ(?)を書くことで有名なベストセラ作家であるが、数年前に引退してからは、比較的どうでもいい作品を連発するようになった。色々想像するに、名前だけで指名買いされる作家になったために、編集者からお声がかかるのであろう。筆も早いし、ちょちょいと書くだけでそこそこ売れるのだから、本当にムカつく話である。しかも、既にうなるほどの資産があるので、本が売れなくても痛くもかゆくもないわけだ。何とも羨ましい話である。

 

一生かかっても使い切れないほどの印税を手にし、文字通りの「ファイナンシャルフリーダム((C)橘玲)」を手にした氏は、現在は本業(大学教授)も辞め、日本の某所にオーダメイドの住宅を建設したそうだ。いまは悠々自適の生活らしい。快適に設計された楽園で奥様と二人で静かに暮らしながら、趣味の模型工作に没頭しているというから、何とも羨ましい人生である。(大事なことなので2回(ry)

 

わたしは氏のファンであるが、必ずしも作品のファンではない。わたしは氏の生き様を羨むだけの穿ったフォロワーに過ぎない。わたしは確かに『すべてがFになる』に衝撃を受け、それ以降のシリーズ(俗に「S&Mシリーズ」と呼ばれるらしいが)は短編も含めて繰り返し繰り返し読んだが、それ以降の作品は、有名な『スカイ・クロラ』も含めて読んだことがない。最初のシリーズはまだ「大衆向け」のように思えるが、売れてから出した作品の趣味はちょっとアクが強すぎてとても読み進められなかった。「Vシリーズ」や「四季シリーズ」は、少し斜め読みしただけで投げ出してしまった。正直言って何が面白いのかわからない。こういうとアレだが、たぶん、森博嗣氏のファンとは仲良くなれないと思う(笑)。

 

しかし、こうしたエッセイの類にはなぜか金を落としてしまう。似たような本を何冊か読んでいるので、内容を読まなくても殆ど何が書いてあるか予想できるし、既に成功した氏に「追い銭」を送るのは正直言ってかなり癪なのだが、お布施だと思って諦めている。で、今回も、本屋でたまたま本書を見つけてしまい、数分ほど逡巡したが、結局買ってしまった。畜生。

 

 

内容は、まあ、一言で言ってしまうと「いつものあれ」である。少なくともわたしにとっては。そういう意味では、本書は自己啓発というより、ある種のセラピーというか、誤解を恐れずに言えば「ポルノ」のようなものである。いつもの調子でいつもの説法をしてくれる宣教師みたいなもので、わたしはそれにお布施をしているわけだ。あたらしい発見は殆どなく、予定調和になっている(だから、買ってしまったことが少し悔しいし、それなのに定期的に読み返してしまう自分が許せない笑)。本書を積極的に手に取るような人はそういう人が多いのではないか。

 

こういうといかにもとってつけたような話かもしれないが、本書に書いてある人生観は、わたしのそれと殆ど同じである。今となっては、氏に影響を受けたせいなのか、それとも自分自身が自然とそうなったのかはわからない。たとえば、次のような考えは、わたしも完全に同意である。わたしが有名人ならむしろドヤ顔で書きたかったほどだ:

 

 人生なんて、長生きしてもたかだか百年ではないか。さらにもっと未来を見れば、いつかは地球は太陽に呑み込まれ消滅してしまうだろう。自分がどう生きようが、最後はすべてが無に帰すのである。それは確実なことなのだ。

 一人の人間に注目しても、その人はいつ死ぬかわからない。僕も貴方も、明日生きている保証はない。明日くらいならば、生きている可能性が高いかもしれないが、いつかは死ぬ。これは確実なことだ。そういう意味では、みんなの未来は確実に保障されている。

 このように、抽象的に見るために客観性を増して遠望すると、「すべてが虚しくなる」という人もいる。そのとおり、虚しいと僕も思う。しかし、「虚しくなるから考えない」というのも理由として変だ。おそらく、「虚しいことは悪いことだ」と思い込んでいるのだろう。

 日本には古来、虚しさを楽しむ文化があるではないか。人生の目的は、虚しさを知ることだといっても良いかもしれない。追求すべきものであり、忌み嫌って避けるような対象ではないはずだ。

 

人が人を理解することは難しい、というより、不可能とさえ言える。それでもなお、他人に理解を求めずには居られない。自分の考えることを他人に知ってもらいたい、自分と同じようなことを考える人に会って話がしてみたい。自分がもやもやと考えていることを、うまく言語化して、すっと腹に落ちる体験をしてみたい。要するに、そういう対象なのである。森博嗣は。