エボラウイルス病についての雑感
ここのところエボラウイルス病(EVD)についての報道が減ってきたように感じる。一時期、世界的なパンデミックとなるのではないかと危惧したが、ふたを開けてみると、意外なことに先進国ではほとんどが水際で食い止められるか、感染しても治癒するケースが殆どのようだ。WHOによれば、2014年10月31日時点の各国の感染者数、死亡者数は以下のとおりである:
国名 | 感染者数 | 死亡者数 |
ギニア | 1667 | 1018 |
リベリア | 6353 | 2413 |
シエラレオネ | 5338 | 1510 |
マリ | 1 | 1 |
ナイジェリア | 20 | 8 |
セネガル | 1 | 0 |
スペイン | 1 | 0 |
米国 | 4 | 1 |
合計 | 13567 | 4951 |
WHO | Situation reports: Ebola response roadmap
エボラのイメージは当初もっていたそれと実際の姿は大きく違うようだ。もちろんわたしは疫学的、生物学的な知識が全くなく、単に報道から断片的な知識を得ているだけの素人に過ぎないので、専門的な意味では大きな誤認をしているのかもしれないが、「思ったより人が死なない」「意外とうつりにくい」病気であるといえるのではないだろうか。少なくともわたしの印象は当初のイメージと大きく変わった。とくにそう感じる根拠としては次のような点が挙げられる(なお、言うまでもないがこれはわたしの主観であり何の科学的な根拠もないことに注意していただきたい):
・感染力が思ったほど強くない…体液に含まれる感染力は非常に強いが、感染力をもつのは感染者の発症時&体液に直接触れるという条件が必要。潜伏期間は殆ど感染力がない。また、普通の石鹸手洗いで洗い流せるらしい
・感染しても先進国では治癒する…医療設備の整った環境では、対症療法で治癒する可能性が十分ある。事実、米国では感染初期に隔離、治療されたテキサスの看護婦2名(ファム氏、ヴィンソン氏)はいずれも治癒しており、国境なき医師団(MSF)のスペンサー医師も、「重症だが容態は安定している」との報道がある。結局亡くなったのは初動でトラブルのあったダンカン氏のみであった
・ナイジェリアやセネガルでは「収束宣言」がなされた…適切な封じ込めを行えば、人口密集地ですら封じ込めが可能であることの証左といえる
しかしながら、勿論楽観視してよいということにはならないだろう。試験薬が臨床に入るとか、未承認薬に効果がある可能性があるなどの楽観的な材料も増えてきているものの、エボラの恐ろしいところはやはり突然変異の可能性があることだろう。『ホット・ゾーン』でも描写されていたが、空気感染する株(エボラ・レストン)が存在し、いつ人間にも感染する株に変異するのかは「確率の問題」だという人もいる。。。らしい。
日本に入ってきたらどうなるだろうか? 残念ながらまだまだ準備が不十分で、パニックになってしまうのではないか、あるいは適切な封じ込めが行えず、首都圏でそこそこ酷いアウトブレイクが発生してしまうのではないか疑念がぬぐえない。前回の羽田のジャーナリスト氏の騒ぎは、ボンヤリ暮らす都民の目を覚ますための意図的な「予行演習」「示威」ではないかとすら思っている(陰謀論)。エボラを本格的に取り扱うことができるBSL4の施設は未だアクティブになっていないようであり、我が国の対応状況に関してはまだまだ予断を許さないというところであろう。
また、シエラレオネでの感染者数が減少傾向にあるという情報もあるようだが、実際には「混乱により正確にカウントできなくなった」「部落そのものが全滅し感染する対象がなくなった」などという不穏当な噂も聞く(ソース未確認)。
他にも、西アフリカではエボラの影響で、従来からあるマラリアやHIVに対する治療が困難または不可能になることで、こうした既存の病気による被害が二次災害的に増え続けているとの情報もある。もともと感染が拡大したのも、現地の人々の迷信であったり部族的な因習(葬儀の際に遺体に触れる)などに依るところが大きいとのことで、エボラはまさに「貧困の病」と言えるのかもしれない。