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これから10年、新しいお金とのつき合い方

 

ある仕事の帰り、日本橋の丸善に立ち寄ったところ、目立つ位置にディスプレイされていたので思わず買ってしまった。以前「外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書) 」というのを読んだことがあり、著者に関しては概ねバックグラウンドを把握しているつもりだったため少し期待していたのだが、今回の本はいわゆる「やっつけ」の類であろう、あまり丁寧に作ってある感じがしなかった。データや主張の裏を取っておらず印象で騙っている部分も多く、残念なことに一部タイポなどもあった。とはいえ内容はそれほど突っ込みどころはないように思う。この手のライトなマネー指南本として内容は悪くないし、業界に変な気を遣うこともなく率直に事実を語っていておもしろい。「公的年金はすでに破綻しています」と言い切っているところなどは好感が持てる。

 

しかしながら、どうも既視感がぬぐえない。おそらく、この手の本としては山崎元氏や橘玲氏の一連の著作に親しんでいれば本書は買う必要はないのだろう。山崎氏や橘氏などにもみられるスタンスであるが、著者は「読者は自分で考えて欲しい」というスタンスに立ちながらも、随所に「こうしなさい」という記述が多く見られ、結局マネー本の説く教義はこれしかないのかなと、ややズレた感想を抱いた(笑)。とはいえ、先ほど引き合いに出した橘氏などはもう少し読者を突き放しており、自分の頭で考えられない読者をドンドン置いてけぼりにする傾向があるように思う。それに比べれば、著者はもう少し読者、すなわちわれわれのような「情報弱者」に配慮しており、答えを欲しがる現代人としてはこちらのほうが読みやすいのかもしれない。

 

ところで、この手のマネー本をいくら買って読んだところで、耳年増になるばかりで絶対に資産家にはなれないことだけは間違いない事実である。とくに本書はそうであろう。何といっても著者は「お金に色がついている派」らしく、本書で次のように述べている:

 

お金は汗水たらして稼いだものが一番、尊いのです。それが時給1000円のものであっても不労所得の1000円よりも価値があると考えます。 

 

しかし、実際は資産家というのはすべて例外なく不労所得で得た利得をさらに投資することで利得を得るサイクルを手にし、そこから結果的に大きな資産を保有しているのであって、自分が働くことを前提にしている以上、いつまで経っても「ファイナンシャルフリーダム」にはなれないのではなかろうか。橘氏の言うところの「月並みの国」の住人の未来はいつまで経っても労働者に過ぎないのである。結果としてのお金に色がついてあると思うのは、自分の労働に意味を見出したい貧乏人の防衛機制ではあっても、資産を増やすことには何の貢献もしてくれない哲学だろう。

 

とはいえ、人生が幸せかどうかは、著者も言うように資産の多寡とはまた別の話であろう。たとえば明日急に死んでしまえば幸せもクソもないし、そして明日突然死んでしまうような可能性は常にあるわけで、結局のところ幸せかどうかは究極的には事前に予見のしようがないのではなかろうか。わたし自身は、人生については不可知なものとして付き合っていくしかないように思っている。