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コロコロ創刊伝説

コロコロ創刊伝説(1) (てんとう虫コミックス)

コロコロ創刊伝説(1) (てんとう虫コミックス)

アラフォー世代にとって、コロコロコミックは微妙な立ち位置の雑誌だろう。正直言って、ジャンプを読んでいる「ついで」に読む漫画だし、内容も子供っぽくて、わたしのようなませたガキにとってはあまり面白くない漫画だった*1。したがって、正直言ってあまり思い入れのない漫画雑誌であった。もちろん『かっとばせキヨハラくん』や『おぼっちゃまくん』など、タイトルを覚えているものもあるにはあるが、定期購読していないのでなにか湧き上がってくるような強烈な思い出がない。これがジャンプであれば、『ドラゴンボール』をはじめ、『魁!男塾』『ろくでなしブルース』『ダイの大冒険』と言ったメジャー路線だけでなく、『珍遊記』『アウターゾーン』『変態仮面』と言った微妙な作品群ですら作家名とともに思い出せるほどである。思い返しても、当時のコロコロの印象は「なんか分厚い割に紙面が小さい*2」、やたらハドソンとミニ四駆が出てくる子供向けの漫画」という感じであった。
 
そんなコロコロ世代にも関わらず、コロコロコミックをあまり愛していないわたしが何故この本を手に取ったのかというと、なぜかのむらしんぼセンセの名前だけはやたらと覚えていたからであった。正直、代表作である『つるピカハゲ丸』も、ドストライク世代にも関わらずちゃんと読んだ記憶がない。だがしかし、なぜか作品は覚えていないのに、「のむらしんぼ」という作家名だけは強烈に覚えているのだ。不思議なことだ。
 
ということでなんとなく買ったこの漫画であるが、意外に深い。子供向けギャグ漫画の作者には似つかわしくない壮絶な半生を開陳しているのだが、作風があまりにもあっけらかんとしているが故に、全然悲壮感を感じないのが凄まじい。同じようなエピソードを玉吉せんせあたりがやれば、読者は鬱まっしぐらであろう。感覚的には『アル中病棟』『失踪日記』に近いと言えば近い。が、吾妻せんせのそれよりも圧倒的に底抜けの明るさがあって、全然悲壮感がないのがすごい。カネがなく、家族も離散しているのに、しんぼセンセ、どういうことやねん? わたしは元来が根暗でネガティブ思考であるが故に、こういう人が羨ましくて仕方ない。
 
ということで、コロコロコミックを熱く振り返る本人のテンションとは別に、バブル世代を「一発屋」で終わった漫画家が、人生をかけて取り組んだ「少年漫画」という世界を垣間見るドキュメントとして読んだ。生存バイアスという言葉しか思いつかない、この厳しい漫画業界をしぶとく生き抜いた男の半生がここにある。漫画が売れず、それでも尚漫画をやめず、恨み節も言わずに、還暦を過ぎてなお自分を切売*3して作品に昇華しているのが素晴らしい。わたしは率直に言って感動した。我々世代も、厳しい受験戦争を勝ち抜いた先に待っていたのが就職氷河期で、そして今はリストラの恐怖に怯えている。安泰であるはずのサラリーマン生活も安定とは無縁の半生であり、しんぼセンセの半生と重ねずにはいられない。それでもなお、漫画を描き続けるしんぼセンセは、はっきり言ってかっこいい。

*1:そもそもわたしは定期購読するようなお金がなかったので、回し読みで読んでいただけであったが

*2:言わずもがなであるが、ジャンプマガジンのB5サイズに対して、コロコロコミックやボンボンはA5サイズであった。

*3:要するに自分を主人公とする日記漫画を書く行為のことをわたしはこう読んでいる